札幌にある筆者の実家の庭に、キツネがよく来て畑を掘り起こしていました。
理由はコンポストや土の中から匂うコンポストでできた肥料の匂いにつられて、餌探しをして荒らしていたのです。掘り起こされてあちこち穴だらけになっていました。夜中に来ているので、畑で糞尿をしていたかわかりませんが、せっかくできた野菜にエキノコックスがついていないか心配になりました。
また、ネズミも年に数回出ました。職場の倉庫でも見たことがあるのですが、エキノコックスに感染したネズミがキツネの餌になり、キツネがエキノコックスにかかるというのが寄生サイクルの一つです。
北海道ではどこにでもキツネやネズミがいますし、例えキレイに見えたとしてもどこの湧き水も安全とは言い切れないのです。
本記事では、北海道の湧き水を生のまま摂取することの危険性と、エキノコックスについて詳しく説明します。また、もし湧き水を誤って摂取してしまった場合の対処法や検査方法についても触れていきます。
エキノコックスとは何か?
エキノコックスは、イヌやキツネなどの肉食動物が保有している寄生虫「犬回虫」の幼虫です。感染源は、これらの動物の糞便や排泄物に存在する卵です。エキノコックスの卵は直径0.03mmと極めて小さな卵で肉眼では見えません。水源でキツネが尿をして、湧き水の中に侵入することがあります。
水源には様々な動物が集まるので、注意が必要です。
犬を散歩させていて犬の足の裏や毛の中に卵がついて家に持ち運んでいて、いつのまにか感染したというケースもあります。
人間がエキノコックスの卵を摂取すると、幼虫が体内で孵化し、重篤な病気を引き起こします。
エキノコックス感染の危険性
エキノコックス感染による病気は「エキノコックス症」と呼ばれ、腸で卵から幼虫となり、主に肝臓に寄生し臓器に袋状の嚢胞を形成します。初期の感染では症状が現れないことが多く、数年経って初めて病気の兆候が現れる場合もあります。症状が進行すると、嚢胞が臓器を圧迫し、患部の機能低下や破裂による重篤な合併症を引き起こすので怖いのです。
エキノコックス症は薬物治療もありますが、根治するには切除しか対処法がないため手に負えない病気とされています。一度感染すると完治が難しく、治療は非常に困難なものとなります。そのため、北海道の湧き水を摂取する際には、予防策を講じることが重要です。
北海道の湧き水を飲まないでほしい理由
湧き水は一見清潔で美味しそうに見えますが、エキノコックスの卵を含んでいる可能性があります。そのため、生のまま湧き水を飲むことは避けるべきです。
湧き水は不特定多数の人が利用しているため、犬やキツネの糞便が近くや上流にある可能性があります。湧き水を直接口に含んで飲むと、エキノコックスの卵を摂取するリスクが高まります。必ず沸騰させたり、浄水器を使用して濾過するなどの処理を行いましょう。
エキノコックス感染の自覚症状
エキノコックス感染の自覚症状は、感染の程度や感染した臓器によって異なりますが、一般的には肝臓の症状が多いです。
- 腹部の不快感や痛み
- 肝臓や肺などの臓器の腫れや腫瘤(しこり)
- 黄疸
- 消化器系の症状:悪心、嘔吐、下痢など
- 喘息や呼吸困難などの呼吸器系の症状
- 疲労感や体重減少
- 発熱
- アレルギー反応(皮疹など)
重症の場合、感染した臓器に対して圧迫が生じ、臓器の機能が低下することがあります。エキノコックス感染は放置すると、重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期に治療を受けることが重要です。
ただし、症状が軽度な場合や無症状の場合もあるため、感染のリスクがある地域に住んでいる場合や畜産業に従事している場合は、定期的な健康診断を受けることが推奨されます。エキノコックス感染は重篤な疾患であるため、早期発見と治療が重要です。
エキノコックス感染時の対処法と検査方法
もし湧き水を誤ってそのまま飲んでしまったら、早期の対処と検査をした方が安心です。
筆者は小学生の頃、親と山に山菜採りに入り、親が離れている時にのどが渇いて、妹たちと小川の水を飲んで喉を潤したことがあります。とてもキレイな水だったので、大丈夫だろうと見た目で判断したのです。
小学生ながらも道産子なので、エキノコックスの怖さは習っていたし、何となくわかっていました。もしかしたら大人になったら病気になるかもしれないとおびえながら飲んだ記憶があります。
数年後に発症するので数年間怯えながら生きていかないためにも、エキノコックス感染時の対処法と検査方法をご紹介します。
対処法
摂取後すぐに水を一杯飲むことで、胃や腸内のエキノコックスを流し出す効果があります。
摂取後に吐き気や腹痛などの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
数年経ってから発症するため、患部を摘出手術することになりますが、自覚症状が出た時には結構大きくなっている可能性があり、1か所ではすまないこともあるので怖い病気です。
感染のリスクを最小限にするために、旅行者や登山者は湧き水の代わりに持参した水や沸騰させた水を持ち歩くことをおすすめします。
検査方法
北海道では、1次検査は各市町村の保健所にて血清検査(ELISA法)になります。道内の方はまずお住まいの保健所に問い合わせましょう。
血液検査
エキノコックス感染による抗体の有無を調べることができます。感染すると免疫系は抗体を生成します。血液検査では、この感染に対する特定の抗体(主にIgGおよびIgE抗体)の存在を調べるのです。
腹部超音波検査
内臓や肺などの臓器に嚢胞が形成されているかを確認するために行われます。健康診断で病巣が発見されるパターンもあります。
CTスキャンやMRI
CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像法)は嚢胞の位置や大きさ、状態を詳しく観察するために行われます。進行状況を確認するとともに他の臓器への転移がないかも調べます。
エキノコックス症の検診を臨時で受けるには
道内の市町村では決められた日程で検査を受けることになります。その日程で受けられない場合は、下記の検査機関に電話等で相談することになるでしょう。最寄りの医療機関(病院など)で採血→検査結果を聞く、という方法になるはずです。
(この場合、検査費用は、医療機関から診察料として請求されますので、医療機関の窓口で支払うことになります。)
北海道の検査機関
🏥社団法人北海道臨床衛生検査技師会立衛生研究所
〒065-0019
札幌市東区北19条東17丁目
電話:011-786-7072
FAX:011-786-7073
🏥北海道立衛生研究所
〒060-0819
札幌市北区北19条西12丁目
担当:感染病理科(直通 011-747-2768)
電話:011-747-2711
FAX:011-736-9476
水汲みに行って安心して飲む方法 浄水器・沸騰
水汲みでも整備されているところもあれば、湧水を汲むような場所もあるでしょう。管理されて水質検査がされているところならば安心ですが、されていないような場所は不安になりますよね。そんな時は浄水器にかけてから飲んだり、煮沸してから飲むと安心です。
浄水器を使う
エキノコックスの卵を除去する能力がある浄水器をご紹介します。持ち歩き出来る浄水器は除去能力の低いものもあるので、厳選すべきです。
登山の方やアウトドアで携帯に便利。エキノコックスも除去する浄水器。
水を沸騰させる
エキノコックスの卵は熱に弱いです。100℃で1分加熱すると死滅します。熱には弱いのですが寒さには強く、-20℃出も生き延びるデータがあるので、あらためて北国で多い病なのだなと感じます。
北海道の湧き水とエキノコックスの危険性・まとめ
北海道の湧き水は美しい自然の一部ですが、エキノコックス感染の危険性があるため、生のまま摂取することは避けるべきです。エキノコックスはイヌやキツネなどの肉食動物が保有している寄生虫の幼虫であり、摂取すると重篤な病気を引き起こす可能性があります。
エキノコックス症は初期の感染では症状が現れにくく、数年経ってから発症することがあります。内臓や肺、脳などの臓器に袋状の嚢胞を形成し、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。感染後の治療は困難であり、早期発見が重要です。
北海道の湧き水を摂取する際には、以下の点に注意しましょう。
湧き水を直接口に含んで摂取すると、エキノコックスの卵を摂取するリスクが高まります。必ず沸騰させたり、浄水器を使用して濾過するなどの処理を行いましょう。
もし湧き水を誤って摂取してしまった場合、摂取後すぐに水を十分に飲むことで、胃や腸内のエキノコックスを流し出す効果があります。
~犬の散歩をする方へお願い~湧き水の周辺や上流での散歩、ゴミの放置はやめましょう。
結論として、北海道の湧き水を飲む際には沸騰させたり、浄水器を使用するなどの手段を取ることが重要です。また、エキノコックス感染の場合、発症までに数年かかることがありますので、身に覚えのある人は定期的な検査を受けることをおすすめします。安心して北海道の自然を楽しむために、健康に配慮した行動を心掛けましょう。
参考:北海道立衛生研究所https://www.iph.pref.hokkaido.jp/topics/echinococcus1/echinococcus1-1.html